兄とその妹

これが、戦前か?と言うのが第一印象。
桑野通子が着るコート、朝食にトースト、ピクニックに行ってコーヒーを飲む。それから銀座で買ったというアイスクリームなんかも。
富士山を手に乗せるシーンなんか、とてもオシャレだ。
そう、すごくオシャレな映画だった。
例えば、誕生日に差出人不明の薔薇が送られてきたりする。
今だってそんな男性はいない。

三宅邦子の良妻賢母ぶり、桑野通子の利発ぶり、そして佐分利信の良い旦那さんっぷり。
職場では部下に上司に頼られ(時として同僚に疎まれるほど)、家庭では妻の家事を手伝う、兄。兄の上司の甥との縁談を、会社内での兄の立場が悪くなるのではないかと破談に決める、妹。そしてそのふたりを支える妻という、3人がメインの、初期松竹大船調の作品だ。
どこに碁を打とうか考えるシーンや、妻がハタキをかけるシーンなど、モンタージュ技法も見られたりして。当時からあんな風な撮影法もあったのか、なんて。

果たして戦前の一般的な家庭はここまでハイクラスだったんだろうか?
小津安二郎の戦後映画もだが、みんなブルジョアだなあ。

そしてラストの満州へと飛び立つところで、わたしはどうしても時代を感じてしまうのだ。