2013-01-01から1年間の記事一覧

A(森達也、1998)

ドキュメンタリー映画のクラスの期末レポートのレジュメ(って日本の大学だと言うのだっけ?)が配られた。ひとつドキュメンタリー映画を選び、それについてのバックグラウンドといくつかの批評をまとめて、自分の議論も書き加える、まあ内容的にはいたって…

『意志の勝利』(レニ・リーフェンシュタール、1933)と、メモ

映画って、制作者も観客も、結局はモラルと美学の葛藤なのかもしれん、と、なんとなく。 例えば『意志の勝利』でのレニ・リーフェンシュタールはモラルよりも美学を優先した。そしてその観客である私は、彼女の美学を感じつつ、しかし「良い映画」とは言えな…

『サンライズ』(F・W・ムルナウ、1927年)

今授業で見て来たばかり。ムルナウの作品は初めて見たけれど、こんなに美しい素晴らしいサイレント映画があったのか、と今かなり興奮しているし、凄く幸せだ。まるで絵本のような始まりで、そうかと思えばいきなり画面がオーバーラップして空間がいっきに飛…

ドキュメンタリー映画の授業で見た作品

『極北のナヌーク』(ロバート・フラハティ、1922) まだまだサイレント時代だったのでインタータイトルに頼らざるを得ないが、そのせいで物語性も増して、詩的表現になっている。イヌイットの生活を映し出しつつ、観客が求めているイヌイット像を作り上げて…

雑記:10月4日

うおお、やっぱり時間ない! 先々週はロバート・フラハティの『極北のナヌーク』とデイビッド・ラシャペルの『ライズ』についてのペーパー(全然つまらない内容のペーパーが仕上がったけど成績は良かった)、今週はジガ・ヴェルトフの『カメラを持った男』と…

映画学:ドキュメンタリー映画 <ドキュメンタリーの始まり>

覚え書き。 ちなみに教科書はビル・ニコルズの『ドキュメンタリー入門 (2010)』を使っています。1826年にニセフォール・ニエプスが写真を発明、1839年にはルイ・ダゲールによるダゲレオタイプ、1840年には複製可能な写真、1867年にゾーエトロープ、1888年に…

雑記:9月6日

4日から秋学期がスタート。今期は人類学から3つ(人類考古学、形質人類学、文化社会人類学)、映画学から2つ(映画史I、ドキュメンタリー映画)。 結構あっぷあっぷなスケジュールになりそうな予感です。シラバスが出たのでテストの予定を手帳に書き込んでい…

パシフィック・リム(デル・トロ、2013)

土曜日夕方のシネコンで鑑賞。ルーツが同じだと、やはり似た雰囲気の作品になるのだろうか。私は怪獣映画も一番始めのゴジラぐらいしか見ていないし、特撮もギャバンを所々しか見ていないし、ロボットアニメも数本しか見ていないわけだけど、特撮・怪獣・ロ…

エリジウム(ブロムカンプ、2013)

一足お先に『エリジウム』鑑賞。平日のシネコンはひとり客(それも女性の)が多いなあ。『パシフィック・リム』を観た時は週末の夕方だったのでカップルやグループ客が多かった。 以下、ネタバレ(はそんなに無いと思うけれど…)。 ディストピア対ユートピア…

雑記

先週で夏学期が終わった。映画学入門も完了。成績は良かったです。 新学期は9月の頭からなので2週間ずっと映画見て本読むかーと色々借りて来ているんですが(アンドレ・バザンとか、認知派映画理論の本とか、理論入門の本とか、借りましたよ、映画学徒らしく…

「アカデミック」な英語

『ラン・ローラ・ラン』について書いた5ページ程度のペーパーが返って来た。ローラの一回目のシナリオからラストにかけての映画内時間と実際の連続する時間への移行が編集によってどのように描かれているか、みたいなことについて書いた。成績はA-、良いほう…

ウォーカバウト 美しき冒険旅行

『アラビアのロレンス』『ドクトル・ジバコ』等のシネマトグラファー、ニコラス・ローグの1971年の作品。 ナラティブの不合理さを掻き消してしまうほど力を持ったカメラワーク!事あるごとに対比、対比、対比!可能な限りの技法をふんだんに使いまくったのは…

ミミノ

悲劇コメディ系映画で有名なグルジア人監督、ゲオルギー・ダネリヤによる1977年の作品。『不思議惑星キン・ザ・ザ』の人です。この『ミミノ』で77年のモスクワ国際映画祭金賞受賞。『ミミノ』は、悲劇コメディというより、哀愁コメディと言ったほうがいいか…

鶴は翔んでゆく

1957年、ミハイル・カラトーゾフのソ連映画。 いわゆる「雪解け」がソ連で始まっている中、フランスではヌーヴェルヴァーグが起こっていた。ゴダールの『勝手にしやがれ』が60年。『鶴は翔んでゆく』はその3年前。 『勝手にしやがれ』は授業でも取り上げたし…

恋する惑星

授業で見た映画もまとめたいけど、今日見たものから書いて行く。ウォン・カーウァイは初めて見た。本来ならばあのアーティスティックなカメラワークに注目すべきなのだろうが、それよりも金城武の初々しい可愛らしさ、トニー・レオンの正統派イケメン具合ば…

映画って!

映画を学問として勉強し始めて、さらに映画が好きになった。 映画が作り上げる擬似リアリティの世界はつまりイリュージョンなのだが、しかしリアリティの一部だという事実。 そしてそのリアリティは可能な限りのテクノロジー、工夫によって構成されていると…

憂国

三島由紀夫監督・主演作品。映画というよりも室内劇のような28分間の体験。強烈。絶え間なく流れるトリスタンとイゾルデが章と章を繋ぐ。第三章で彫刻のような肉体を映し、そして第四章の切腹、最終章の麗子の自決。死のイメージと性のイメージが対立し合う…

映画学入門:ソビエトモンタージュ

・知的モンタージュ(intellectual montage): ・物語ショットと全く別のショットを繋ぐことによって第三の意味を作り上げる ・ひとつのショットは次のショットと並べることによって意味を持つ ・ひとつのショットだけでは本質的な意味を充分になさない・エ…

映画学入門:ソビエトモンタージュ

・知的モンタージュ(intellectual montage): ・物語ショットと全く別のショットを繋ぐことによって第三の意味を作り上げる ・ひとつのショットは次のショットと並べることによって意味を持つ ・ひとつのショットだけでは本質的な意味を充分になさない・エ…

映画学入門:編集

・コンティニュイティエディティング(continuity editing): ・または「不過視編集(invisible editing)」 ・場面から場面の場所や時間の変化をスムーズに伝える時に使われる編集法: ・フェードイン/アウト ・ディゾルブ(現在の場面が消えつつ次の場面…

映画学入門:照明

・照明の比率: ・キーライト—高い比率、強いコントラストを生むメインの照明 ・フィルライト—比率を下げる、キーライトをサポートする照明 ・ハイキー—フィルライトを強くした状態 ・ローキー—フィルライトを少なくした状態・照明の質: ・ハードライト—被…

映画とは何かII

映画とは何か、映画は何を見て理解すれば良いのか? 何をもって映画を映画とするのか?今のところ、シネマトグラフィ(映画撮影技術)が一番じゃないかな、と思えています。 こんなにシネマトグラフィが情報を持っている何て考えても居なかった。今まで映画…

映画学入門:シネマトグラフィIII(カメラの移動)

・制約がある動き: ・パン—水平に動く(右か左) ・スイッシュパン—素早く水平に移動、残像が発生する ・ティルト(傾き)—垂直に動く(上か下) ・トラッキング/ドリーショット—トラック上にカメラ台を設置して前後左右の移動 ・クレーンショット・制約…

映画学入門:シネマトグラフィII

・フォーカス: ・ディープフォーカス—画面内の全てのピントが合った状態、観客に視点を委ねられる ・シャローフォーカス—レンズによる効果、背景の焦点は関係ない ・ラックフォーカス(rack focus)—同ショット内での焦点の変化・フィルムストック(映画用…

映画学入門:シネマトグラフィ

・基本的な映画(フィルム)の構造: ・フレーム—主なものは1秒24コマ ・ショット—編集と編集の間 ・シーン—連続したアクション ・時間、空間、アクションがあればそれはシーン ・シークエンス—連続した関連のあるシーン・ショットの種類: ・一時の期間 ・…

トリコロール/赤の愛

久しぶりに落ち着いてフランス映画を見れた気がする。とても良い映画だった。全編に溢れ出る優しさと愛。 普段、「フランス映画」と聞くとウヘ〜ってなるくらい苦手意識強い。いつからそうなったんだろう?ゴダールのせいとしか思えない! 映画を見始めた人…

映画学入門:ミザンセーヌ

・ミザンセーヌとは セッティング(空間)、衣装、メイクアップ、小道具、ライト等映画内で目に見えるもの。 カメラが回る前に全てセットアップされているもの。 シネマトグラフィも含まれることもある。・セッティング: ・ナチュラル・ロケーション=安い…

映画学入門

大学の授業をまとめようと思ったので、新しいカテゴリー「映画学」(そのまんま)を作りました。自分用のメモにしつつ、映画学がどんな授業なのかを書いて行こうと思います。 ちなみに現在夏学期の映画学入門を取っているため、本来4ヶ月で終わらせるべき内…

東京家族

旅行中のフライトで見た(ちなみに行ったのはペルー)。 感想を素直に。はっきり言って、私は駄目だった。駄目だと言うのは受け入れられないと言う意味で。2時間半という長い尺の中、見られない映画と言うのなら話は早い。見なきゃ良い。この場合、見られる…

マデイヌサ (2006)

『悲しみのミルク』を撮ったクラウディア・リョサの長編処女作。「これ、極端すぎない?」とは思ったものの(儀式のシーン等)、映画の中の雰囲気は奇妙に明るく、そしてえげつない。サルバドールと言うリマ(都会、外、白人系)からの介入はあるが、映画の…