グッバイ!レーニン

自分が初めて「映画」というものを意識するようになった作品はどれかと聞かれたら、グッバイ!レーニンだろう。
中学二年の頃、母と地元のインディペンデント系映画館へ行き、この映画を見た。シネコン以外の映画館へ行くことが初めてで、ドギマギ緊張していた記憶がある。今までアニメや金曜ロードショーでしか映画と言うものは見たことがなかったし、何より映画は娯楽だと、ずっと思ってきた。映画が「考える」きっかけになるとは思ってもみなかった。自分の映画感を変えてくれた、一番最初の作品。
主観抜きでは見られないのだった。思い入れがあり過ぎて。
その日何を来てどのカバンで映画館へ行ったのかも覚えているくらいだ。

そんな映画を10年ぶり(正しくは9年ぶり)に見た。
その時は気付かなかった、今は気付くことが沢山ある。キューブリックフェリーニのオマージュは勿論のこと、冒頭の8mmのシーンはヴェンダースのようにも思える。映画全体の雰囲気が、無くなってしまった東ドイツ社会主義へのノスタルジーで溢れ返っていることや、急激な変化に対してのあからさまな皮肉。
後半(特にラスト)の失速具合や、説明の多さも今は気になってしまうが…。
でもだからこそ、本当にわかりやすい作品だと言える。

「好きな映画は」と聞かれても窮するだけだが、これからも「グッバイ!レーニンかな」と答えるだろう。オススメはと聞かれるのは苦手なのだが(映画好きは誰しも苦手だと思っている)、この作品なら他の私の好きな映画と違って当たり障りがないので。


グッバイ、レーニン! [DVD]

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