兄とその妹

これが、戦前か?と言うのが第一印象。
桑野通子が着るコート、朝食にトースト、ピクニックに行ってコーヒーを飲む。それから銀座で買ったというアイスクリームなんかも。
富士山を手に乗せるシーンなんか、とてもオシャレだ。
そう、すごくオシャレな映画だった。
例えば、誕生日に差出人不明の薔薇が送られてきたりする。
今だってそんな男性はいない。

三宅邦子の良妻賢母ぶり、桑野通子の利発ぶり、そして佐分利信の良い旦那さんっぷり。
職場では部下に上司に頼られ(時として同僚に疎まれるほど)、家庭では妻の家事を手伝う、兄。兄の上司の甥との縁談を、会社内での兄の立場が悪くなるのではないかと破談に決める、妹。そしてそのふたりを支える妻という、3人がメインの、初期松竹大船調の作品だ。
どこに碁を打とうか考えるシーンや、妻がハタキをかけるシーンなど、モンタージュ技法も見られたりして。当時からあんな風な撮影法もあったのか、なんて。

果たして戦前の一般的な家庭はここまでハイクラスだったんだろうか?
小津安二郎の戦後映画もだが、みんなブルジョアだなあ。

そしてラストの満州へと飛び立つところで、わたしはどうしても時代を感じてしまうのだ。

アンダーグラウンド

地元の小さな映画館でリバイバル上映をしていたので、折角だし、と思い、見に行った。
150人程のシアターに、10人もいなかった。

オープニングの音楽から、ずっと引き込まれてしまった。久しぶりに力強い作品を見た気がする。とにかくすごい。やはり頭に残るのはあの音楽だ。ずっと頭の中でリフレインしている。
第二次世界大戦、冷戦、ユーゴスラヴィア内戦という3つの大きな戦争を描くに、おそらくあそこまでのテンションに持って行く必要があったように感じる。
だけどやはり哀しい。特に最後の、狂言回し的ポジションのイヴァンの独白、そして旧友たちを乗せ切り離されて流れ始める半島。彼らにはもう帰る土地、国、祖国がなくなってしまったのだ。

私に欠けているものは、背景を理解するための歴史の知識だ。
そういえばユーゴ内戦に関して全くと言っていいほど知らない。
生きている者として、やはり過去の出来事は知る必要があり、そしてそれはとても難しい事なのかもしれない。



アンダーグラウンド Blu-ray

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