晩春

小津安二郎の、初めて父と嫁入り前の娘をテーマにした映画。
今まで見て来た彼の作品はまだ3作しかないが(東京物語秋刀魚の味彼岸花)、一番悲しいストーリーで、一番悲しい終わり方だったように感じた。

どこかで父・周吉と娘・紀子の間に性的コンプレックスがあった、と記述されていたのを見た事があるが、やはり他の作品より父と娘の距離は近いように感じた。
東京物語での周吉は、実の子供には煙たがられ、嫁である紀子との関係の方が良好だった。
秋刀魚の味での周吉は、娘とはすこしぎこちなく感じた。
彼岸花では笠智衆は周平だったが、家出した娘に会いに行く事すら躊躇う父親だった。
それらに比べて晩春での父娘は、かなり仲も良く、かつお互いがお互いを必要とし合うような関係であった。一番似ている関係は、秋刀魚の味での父娘ではないかな、と思う。
しかしその関係の距離感が性的コンプレックスに繋がる決定的ななにかには成りえない気もする。

実際わたしはまだ4作品しか彼の作品を見ていないのでなんとも言えないのだが・・・。

ところで、戦後5年であそこまで欧米化するのだろうか、ということが気になってしまった。作中では既に英字が街にあふれていた。若い人は皆洋服を着ていたし、食べるものもケーキやらサンドウィッチやら紅茶やら。
たった5年前まで「鬼畜米英!」とかなんとか言っておいて、すぐ順応できるあの当時の人間はすごい、と少し思った。


晩春 [DVD]

晩春 [DVD]