ベルリン 天使の詩

寓話的な詩と、美しい映像、優しい音楽。とても哲学的でロマンチックな作品だった。
白黒時の陰影の具合が何とも素敵だ。はっきりしていて、非常に美しい。
人間になりたい天使と、天使の宿命を全うすべきだという天使と、人間になる事を誘う元・天使。それが面白くもどことなく哀しい。
そして、ピーター・フォーク
素晴らしい、とにかく素晴らしいんだ。映画の始めは、どうしてコロンボが出ているんだろう、しかも本人役で、と思っていたが、後半でなるほどと納得。彼のお茶目な魅力がふんだんに出ていた。

天使から見て人間界が内側なのか。おそらく歴史の内側にいるからだろう。彼ら天使の視点がモノクロで、人間の視点がカラーなのが面白い。ダミエルが人間になったときのロケーションの色彩の豊かさに感動を覚えた。彼は歴史の外側にいることをやめ、とうとう歴史に介入してきたのだ。

この作品を見ると、生きている事が素晴らしく感じる。
暖かいコーヒーを飲み、絵を描き、寒かったら手を擦り合わせれば良い。
そんなことだけど、そんなことが素晴らしいのだ。とにかく前向きで、その点、『パリ、テキサス』とは対照的だと思った。

ふとした時に考えてしまうとつい悪い方向になりがちだが、そういう時、天使が肩にそっと触れる。「まだ大丈夫だ、なんとかなる」と思えるようになる。
天使は子供でもなければ可愛い女性でもない。でも彼らの姿は子供よりも子供らしく見えた。

老詩人ホメロスの姿と詩こそ、歴史だと思う。
彼はポツダム広場の焼け野原にある椅子に座り、何を感じたのだろうか。

「乗船完了!」


ベルリン・天使の詩 デジタルニューマスター版 [DVD]

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