雨月物語
テーマはとても質素なものだと思った。
身の丈に合った生活を。決して欲張らず、誠実に、真面目に。
ただ、映像がとにかく美しいのだ。若狭(京マチ子)の纏う雰囲気はとても冷え冷えとしていて、なんだか地獄にいるみたいだ(吐く息も白い)。こういう雰囲気の事を日本語でなんと言うのか忘れてしまった。幽玄で、幻想的で。
若狭の豹変具合もとても良かったが、何より美しいと思ったのが、亡き者となった宮木(田中絹代)が夫と子供が眠った後、静かに蝋燭の火を点し、せっせと着物を繕う。その時のシークエンスと、徐々に明るくなる光。その時はまだ源十郎は宮木が死んだ事を知らない。なんというか、とても切なく、それでいて艶やか。
戦後直後一番の映像美だと思う。妖艶過ぎるほどのカメラワーク。
これこそほんとうの映画的芸術なのではなかろうか。
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