悲しみのミルク
ペルーから来た友人に勧められるがままに。
ゆっくり悲しみが流れ、そしてトンネルを越えついた場所は大きな海。
主人公ファウスタとその母、それから庭師ノエとの会話はケチュア語で、従姉妹や叔父、リマ内での会話はスペイン語。先住民と入居者(と言えば良いのかな、それとも文明化?)。階段を上った山の上にある家と、大都会リマ。大きくわけて4つのラインと共に、様々な対比がなされていた。
母から伝わった「レイプに対する恐怖」に抵抗するため、膣内にじゃがいもを自ら入れるファウスタ。悲しみの歴史を内に留めておこうとしているのだろうか。しかしそのじゃがいもは自らの意思で、医者の手によって取り出されることになる。なんだか結局トラウマの歴史を伝えて行っても、内の人間(ファウスタ)ではなく外の人間(医者)の手によって解放されるんだよ、と言われているようで。でもそこにノエと言う内の人間からの救いの介入が必要だった。トラウマは外の人間が消し去ることは可能でも、癒すことは内の人間からしか出来ないのだ。
ファウスタとピアノ演奏家の対比も興味深い。どこの国も真っ先に虐げられるのは先住民、富を得るのは入居者/入植者のほうだ。ファウスタと取引を結んだからと言って同等と言うわけではない。その取引も簡単にひっくり返してしまう傲慢さ。
ペルーのセンデロ・ルミソノ集団によるテロリズムの時代、なんて恥ずかしながらひとつも知らなかった。だめだな、やっぱり。文化を知ることより歴史を知るほうが先決のような気がしてきた。
さて、この作品の監督クラウディア・リョサは果たしてどちら側の人間なのだろうとふと思う。「外」から歴史の悲痛さを伝えるための作品なんだろうか。
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