秋日和
今更見た。
これは「晩春」の母娘版なんですね。何より原節子と司葉子と岡田茉莉子と佐田啓二と佐分利信と北竜二と中村伸郎と沢村貞子と桑野みゆきと三宅邦子と三上真一郎と笠智衆と岩下志麻と菅原通済が一つの作品にいて、圧倒と言うか圧巻と言うか。佐分利信と北竜二と中村伸郎が並んで酒をのむシーンではあまりの渋さに笑ってしまった(特に佐分利信)。
晩春のセルフリメイク(なのかな?)とは言いつつ、それよりもさらに複雑な構造になっている気がした。登場人物もいつもより多いような。三輪の友人3人それぞれの家庭、その上娘アヤ子(司葉子)の同僚の家庭。しかし収束は一気につく。いつものように収まるところに収まるのだ。実際に間宮(佐分利信)の台詞で「世の中みんなよってたかって複雑にしているが、案外簡単になるものだ」と言っていた。つまり、この「秋日和」もそういうことなんだろう。
反復の連続の小津映画の中で、やはり探してしまう部分は「いつもと違う」部分。
徐々にアヤ子(司葉子)からゆり子(岡田茉莉子)のほうが画面を占める率が高くなるところは特に。べらんめえ口調とでも言おうか、ゆり子がサバサバとおじさん3人組に向かって喋るところなんて最高だ。でも今までの小津映画の中で、彼女のようなキャラクターはいたかしらと考えると、いなかったように感じる。小津作品の中の女性はいつも静かなイメージだ(怒るときも泣くときも)。
それから、他の作品より、さらにコメディ感が増している。何よりおじさん3人組の小津らしい上品なスケベな話が多い。「彼岸花」のマムシ話とはまた少し違う。今回は秋子(原節子)とアヤ子を完全に性的な眼で見ている、ような気がして。
平山(北竜二)が浮かれているときの間宮(佐分利信)と田口(中村伸郎)のシンクロした動き。ゆり子の翻弄具合など、笑えるところが多かった。「晩春」はどちらかと言えば暗いイメージのほうが強かったため、少しびっくり。
いつものように「戦時中」の話は出てくるが、出てき方もまた別な感じ。「秋刀魚の味」ではどことなく敗戦のイメージとともに流れてきたが、今回はただ単に「父がいた頃の思い出」に付属してくる記憶、という印象。
最後の結婚式のシーン、カットとカットを繋ぐのは岡田茉莉子の視線だった。
小津の映画はまだ全部見ていないので、ゆり子のようなキャラクターがいたのならご一報ください。
「晩春」、結構忘れているな。見返さないと。
というかそろそろ小津作品の登場人物とあらすじと題名を整理しないと、頭の中でこんがらかってきた。晩春と麦秋、特に間違えちゃうんだよなあ。あと浮草と小早川家の秋。それから晩秋という題名を勝手に作り出してしまう。お茶漬けの味はまだ見てないから見たいなあ。秋刀魚の味は何度も見た割に、一度しか見ていない彼岸花と良く間違えることもある。
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