憂国
三島由紀夫監督・主演作品。映画というよりも室内劇のような28分間の体験。
強烈。
絶え間なく流れるトリスタンとイゾルデが章と章を繋ぐ。第三章で彫刻のような肉体を映し、そして第四章の切腹、最終章の麗子の自決。死のイメージと性のイメージが対立し合う。
どちらのイメージも、とにかく美しく、且つ同等のものと扱われている。セックスも自決も一緒なんですよね。
切腹行為が性挿入行為のような撮り方をされていて、とても耽美な印象を受ける。それでいてグロテスク。その対極とも言える行為を繋ぐのはトリスタンとイゾルデであり、麗子であり。
内容も凄いが、やはり三島由紀夫自身の生涯を考えずにはいられない。
65年に製作され、そして彼の自決は70年。中尉と同じ最期で生涯を終える。そのことに対して目眩を覚えるほど三島の美学を感じる。
でも実は一番驚いたのは、映画ではなく、特典に付いていた英語で受け答えをしたインタビューだった。なんだ、この流暢な英語は、と。綺麗なイギリスアクセントの英語を使う三島由紀夫は、日本語を使っている時よりかなり柔らかい印象を感じた。
インテリって最早才能なのかなあ。
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英語版のパッケージがとても良いデザインで、日の丸の上に白字で「憂國」と書かれているのだが、憂の上の部分が白色と同化しているため、「愛國」とも読める。