ウォーカバウト 美しき冒険旅行

アラビアのロレンス』『ドクトル・ジバコ』等のシネマトグラファー、ニコラス・ローグの1971年の作品。
ナラティブの不合理さを掻き消してしまうほど力を持ったカメラワーク!事あるごとに対比、対比、対比!可能な限りの技法をふんだんに使いまくったのは、オーストラリアの自然の美しさを残すためだ。そしてそれは成功している。

特筆すべきはやはり映画的撮影技法。まったくもって自由奔放な映像だ。そしてところどころフェティシズムも見え隠れする。映像によって思わず感覚的にさせられる。ドキドキする。
都会と自然、白人と有色人、文明と原始と、数ある対比も撮影に支えられて表現されている。

本当にストーリーはただ単に映像化するための理由の一部というぐらいにないがしろにされているので、冒頭の父親の急な自殺のシーンなど、いきなり挿入されているため前後が全く理解出来ない。映画に必要の無いシーンも挿入されているが、それも先住民族たちと入植者たちの対比を強化させるためだろう。

こういったシネマトグラフィ至上主義的な作品を見ると、映画に物語って本当に必要なのかな、と思ってしまう。辻褄の合った物語が必要ならば本を読む。映像が付いてこそ映画の意義がある。

だが問題なのは、あまりにもストーリーがないと(いや、そこまでないわけでもないが)、観客として、見ていて目標(ストーリーに対して疑問を持ちその解決を探すこと)を失ってしまうことだろうか。

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次は『赤い影』観るぞー!